茨城県をはじめ、全国の高校教育が岐路に立っています。多くの公立高は定員割れが常態化しているのに対し、私立高や通信制課程は、授業料の実質無償化や不登校の増加を背景に存在感を増しています。さらなる少子化で先行きが見通せない中、揺れる現場の実情に迫りたいと思います。

「今は、高校生の10人に1人が通信制に通う時代です」。これは、昨年9月中旬、鹿児島市でNPO法人グッジョブサポート(鹿児島市)が開いた講演会での内容です。この講演会では、宮之原綾子理事長が、生徒数急増で、存在感を強める通信制高校の現状を紹介してくれました。この講演会には、親子連れら約250人が聴き入っていた。
2020年から開く講演会は、県内に学習施設がある私立通信制16校による合同説明会の一環となっています。登校日数を選べるカリキュラムや、特別な支援が必要な生徒に対応できる体制など、各校の担当者が教育内容の特色を説明してくれます。来場者からは定期的に行われるスクーリング(面接指導)の方法や学費について質問が出ていたそうです。
鹿児島市の女性(38)は、不登校が続く中学2年の息子と参加していました。長く授業を受けていないため、習熟度に合わせて自宅で学べる学校に興味があるそうです。「自分のペースで勉強できる環境なら頑張れそう」と期待していたそうです。
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学校基本調査(速報値)によりますと、通信制に在籍する生徒は25年度、全国で初めて30万人を超えたそうです。2都道府県以下が対象の狭域通信制と、3都道府県以上に学習施設を構える広域通信制があり、多くは広域に在籍するそうです。
鹿児島県内に本校を置く公私立3校の生徒は約1万5000人(県外在住者含む)。全国52カ所に施設がある屋久島おおぞら(屋久島町)では1万1808人が学んでいます。
少子化にも関わらず生徒数が急伸する背景には、不登校の増加があります。24年度に不登校だった小中学生は過去最多の約35万人。生活リズムの不調や人間関係などを理由に登校できない子にとって、毎日学校へ通わなくても学べる通信制は貴重な受け皿となっています。
自由度の高い学びが人気の一方、全日制に比べて中途退学者や進路未定者が多いなど課題があります。グッジョブサポートの宮之原理事長は「自己裁量が大きい分、継続して学ぶのが難しい側面がある。卒業や進路を見据え、自分に合った学校選びが大切」と強調しています。
鹿児島県内の公立高で唯一通信制課程を持つ開陽(鹿児島市)は昨春、開校以来最多の393人が入学した。定員を設けていない通信制は、生徒数が年々増加しています。全体で2252人と県内一のマンモス校となっています。ここでは、教員32人が1人あたり73人を指導しています。生徒が提出する年間計10万通ものリポートを、手書きで添削して返信しているそうです。
地方在住の生徒がスクーリングで通う協力校14校では、近隣校の教員らが面接を担当しています。地方校は小規模化して教員が減っているため、1人が担う面接回数が増えるなど、負担は大きくなっているそうです。
一方、私立の通信制も課題を抱えています。この10年に全国で90校増え、250校を数えています。各地に分校やサテライト施設を展開するが、アルバイトを単位認定するなど、一部で不適切な運営も問題となっています。
星槎大(横浜市)の土岐玲奈准教授=通信制教育=は、通信制には登校や学習に困難を抱える生徒も多いため、「生徒一人一人の特性に合わせた教育・支援体制が、全日制以上に求められる」と指摘しています。「生徒が社会的に自立するために、教育の質も向上させる必要がある」と訴えています。


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